申し送りで失敗しないためには、「正確さ」を軸に情報を伝えることが何より重要です。あいまいな表現や主観だけの報告ではなく、数値・時刻・根拠を明確にすることで、次の勤務者が迷わず判断できる申し送りになります。
申し送りは単なる業務の引き継ぎではなく、患者さんの安全を守る情報のバトンです。伝え漏れや誤った伝達は、ケアの質を下げ、最悪の場合インシデントにつながります。この記事では、若手看護師がつまずきやすいポイントと、現場で活躍する先輩が実践している「正確に伝えるための工夫」を具体的に紹介します。
こんな方にオススメ
- ●申し送りで何を伝えればいいか分からず、毎回緊張してしまう入職1〜3年目の看護師
- ●先輩から「情報が整理できていない」と指摘されたことがある方
- ●重要な情報をうまく伝えられず、申し送りに苦手意識を持っている方
この記事を読むと…
- ●申し送りで「正確に伝える」ための具体的なコツが分かる
- ●情報を優先順位づけして整理する方法が身につく
- ●テンプレートや失敗事例から、実践的な伝え方をイメージできる
申し送りが上手くいかないと患者ケアの質が低下する|若手が陥りやすい失敗パターン

申し送りの失敗は、情報の抜け・あいまいさ・優先順位の混乱という3つのパターンに集約されます。これらが重なると、次の勤務者が患者さんの状態を正確に把握できず、ケアの質が低下します。まずは自分がどのパターンに当てはまるかを知ることが、改善の第一歩です。
情報の抜け・伝え忘れがケアの遅れを生む
最も多い失敗は、伝えるべき情報の抜けです。点滴の残量や次の処置予定を伝え忘れると、次の勤務者の対応が遅れます。緊張や時間のプレッシャーで頭が真っ白になり、記憶に頼って送ってしまうことが原因です。
たとえば「10時に抗生剤の投与予定」を伝え忘れると、投与が遅れて治療計画に影響します。メモや記録を見ながら送る習慣をつけるだけで、抜けは大きく減らせます。情報の抜けを防ぐことが、正確な申し送りの土台になります。

緊張すると頭が真っ白になって、言いたいことが飛んじゃうんです…!

…記憶に頼らなくて大丈夫。メモや記録を見ながら送れば、抜けはグッと減るよ
あいまいな表現で状態が正しく伝わらない
「なんとなく元気そう」「少し痛みがある様子」といった主観的であいまいな表現も、失敗の典型です。受け取る側の解釈に幅が生まれ、状態の判断がぶれます。看護師の感覚だけでなく、客観的な数値や事実をセットで伝えることが求められます。
「痛みがある」ではなく「NRSで痛みスケール7、鎮痛剤投与後に3へ低下」と伝えれば、状態が正確に共有されます。あいまいさを数値や事実に置き換えることが、正確な申し送りの核心です。
優先順位の混乱で重要情報が埋もれる
情報を時系列に並べるだけで、重要度を区別せずに送ると、本当に伝えたい内容が埋もれます。受け取る側は「結局、何に注意すればいいのか」が分からなくなります。緊急度・重要度の高い情報を先に伝える意識が欠けていることが原因です。
急変リスクのある患者さんの情報を、ルーティンの検温報告と同じ調子で送ると見落とされがちです。「今夜特に注意してほしいのは〇〇さんです」と先に伝えるだけで、優先度が明確になります。重要情報を先頭に置くことで、埋もれを防げます。

申し送りの失敗って、どんなパターンがあるんですか…?

…抜け、あいまいさ、優先順位の混乱。だいたいこの3つだよ

「なんとなく元気そう」…私、よく言ってます…!

…それ、受け手で解釈がぶれるね。数値とセットだよ
なぜ申し送りが難しいのか|情報整理と伝え方の3つの課題

申し送りが難しいのは、情報整理・伝え方・時間制約という3つの課題が同時に存在するからです。これらは経験不足だけが原因ではなく、構造的な難しさを含んでいます。課題の正体を理解すれば、対策も立てやすくなります。
膨大な情報から「何を伝えるか」を選べない
申し送りが難しい最大の理由は、情報の取捨選択にあります。カルテには患者さんに関する多くの情報があり、そのすべてを送る時間はありません。「どれが次の勤務者にとって必要か」を判断する力が、経験の浅いうちは育っていないのです。
バイタル・処置・服薬・家族対応など、情報の種類は多岐にわたります。すべてを漏れなく送ろうとすると時間が足りず、逆に要点を絞りすぎると抜けが出ます。「次の勤務帯で判断や対応が必要になる情報」を基準に選ぶと、取捨選択がしやすくなります。
頭の中の情報を言葉に変換できない
情報が頭の中にあっても、順序立てて言葉にできないことが2つ目の課題です。患者さんの状態は理解していても、それを論理的な文章に組み立てる作業は別のスキルだからです。緊張が加わると、さらに言葉が出にくくなります。
SBARのような型を使うと、この変換がスムーズになります。状況・背景・評価・提案という順で整理すれば、頭の中の情報が自然と言葉に変わります。型を持つことで、言葉への変換の負担が軽くなります。
POINT
SBARとは、Situation(状況)・Background(背景)・Assessment(評価)・Recommendation(提案)の頭文字。医療現場で広く使われる情報伝達の型です。
限られた時間でまとめきれない
勤務交代の時間は限られており、1人あたりに割ける時間はわずかです。短時間で要点をまとめる力が求められますが、情報整理に慣れないうちは時間内に収まらず、焦りからさらに精度が落ちます。時間制約が、課題をより難しくしているのです。
複数の患者さんを担当していれば、1人に時間をかけすぎると全体が押します。事前にメモで要点を整理しておけば、本番で言葉を探す時間が減ります。準備によって、時間内にまとめる難しさは軽減できます。

状態は分かってるのに、うまく言葉にならないんです…

…それは別のスキルだよ。SBARみたいな型を使うと楽だね

型…!あと、何を伝えるか選べなくて…

…次の勤務帯で判断や対応が要る情報。それが基準だよ
申し送りの精度を上げる5つの実践的コツ|優先順位付けから声がけまで

申し送りの精度を上げるには、情報の優先順位づけ・数値化・型の活用・事前準備・双方向の確認という5つのコツが有効です。いずれも特別な才能ではなく、意識と習慣で誰でも身につけられます。順番に実践していきましょう。
- 重要度・緊急度で情報を並べ替える
伝える前に、情報を重要度と緊急度で並べ替えます。急変リスク・特別な観察が必要な事項を先頭に置き、ルーティン情報は後ろにまとめます。これだけで受け手が「何に注意すべきか」を即座に理解できます。
- 主観を数値・事実に置き換える
「元気そう」ではなく「体温36.8度、食事8割摂取」と、客観的な数値や事実で伝えます。数値化することで解釈のぶれがなくなり、正確さが格段に上がります。
- SBARなどの型に沿って話す
状況・背景・評価・提案の順で話すと、情報が論理的に整理されます。型があれば緊張していても抜けが起きにくく、受け手も内容を追いやすくなります。
- 事前にメモで要点を整理する
勤務終了前の数分で、患者さんごとに「伝えること」をメモにまとめます。本番で言葉を探す時間が減り、限られた時間内に正確にまとめられます。
- 声がけと確認で双方向にする
一方的に話すのではなく、「質問はありますか」と確認を挟みます。受け手の疑問をその場で解消でき、伝達ミスを防げます。
優先順位づけが申し送りの質を決める
5つのコツの中で最も効果が大きいのが、優先順位づけです。情報を重要度順に並べるだけで、受け手の理解度が大きく変わるからです。人は最初に聞いた情報を記憶しやすいため、重要な内容を先頭に置くことが理にかなっています。
「今夜注意が必要なのは〇号室の〇〇さんで、血圧が不安定です」と先に伝えれば、受け手の意識がそこに向きます。その後にルーティン情報を送っても、優先すべき内容は頭に残ります。優先順位づけは、正確さと分かりやすさを両立させる鍵です。
数値化で「正確さ」を担保する
正確な申し送りの基盤は、数値化にあります。主観を数値に置き換えることで、誰が聞いても同じ状態をイメージできるからです。医療は数値で管理される部分が多く、数値で伝えることが共通言語になります。
「尿量が少なめ」ではなく「過去6時間で尿量200ml」と伝えれば、受け手は自分で判断できます。数値があれば、経過の比較も容易になります。数値化を徹底することが、あいまいさを排除する最も確実な方法です。

全部を数値で言わなきゃって思うと、逆に時間かかりそうです…。

…全部じゃなくていい。判断に関わる数値だけで十分。慣れれば選べるよ
型と準備で緊張に負けない
緊張を乗り越えるには、型と事前準備が効きます。あらかじめ話す順序が決まっていれば、頭が真っ白になっても型をたどるだけで送れるからです。準備されたメモがあれば、記憶への依存も減ります。
SBARのメモテンプレートを手元に置き、患者さんごとに記入しておけば、本番は読み上げながら補足するだけで済みます。これにより、緊張していても一定の精度を保てます。型と準備は、経験不足を補う強力な武器になります。

コツが5つも…覚えられるかな…

…才能じゃなくて、意識と習慣。誰でも身につくよ

いちばん効くのはどれですか…?

…優先順位づけ。大事なことを先頭に置くだけだよ
実際の申し送り場面で使えるテンプレートと失敗事例シミュレーション
申し送りの精度は、テンプレートを使い、失敗事例から学ぶことで実践的に高まります。頭で理解するだけでなく、具体的な型と「悪い例・良い例」の比較を通じて、自分の送り方を客観視できるようになります。
SBARテンプレートの基本構成
実践で使えるテンプレートの基本は、SBARの4項目です。状況・背景・評価・提案の順に記入欄を用意し、患者さんごとに埋めていきます。この型に沿えば、情報の抜けや順序の乱れが自然と防げます。
勤務前に各欄を数分で埋めておけば、申し送り本番では読み上げながら補足するだけで済みます。慣れてくると、カルテを見た瞬間に各欄の内容が浮かぶようになります。テンプレートは、正確さを再現性のある形で支える仕組みです。
| 項目 | 記入する内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| S(状況) | 現在の患者さんの状態・問題点 | 術後2日目、38度の発熱あり |
| B(背景) | 経緯・既往歴・関連情報 | 昨夜から微熱、血圧は安定 |
| A(評価) | 看護師としての判断・考察 | 感染の可能性を念頭に観察必要 |
| R(提案) | 次の勤務者への依頼事項 | 2時間ごと検温、医師報告の確認 |
失敗事例と改善例を比べて学ぶ
失敗事例と改善例を並べて見ると、正確さの差が明確になります。悪い例は主観的で順序が乱れ、良い例は数値と論理で整理されているからです。比較することで、自分の送り方のどこを直すべきかが見えてきます。
悪い例「〇〇さん、ちょっと調子が悪そうなので気をつけてください」では、何に気をつけるのか分かりません。良い例「〇〇さん、術後の発熱38度、2時間ごとの検温と医師報告の確認をお願いします」なら、受け手が即座に行動できます。比較学習は、改善点を具体的につかむ近道です。
| 良い申し送り | 改善が必要な申し送り |
|---|---|
|
|
シミュレーションで本番前に練習する
本番前のシミュレーションは、精度向上に直結します。頭の中で、または同期と口に出して練習することで、言葉への変換がスムーズになるからです。実際に声に出すと、自分の説明の分かりにくさにも気づけます。
通勤中に担当患者さんの申し送りを頭の中で組み立てたり、休憩時間に同期と送り合ったりするだけでも効果があります。繰り返すうちに、型が体に染み込んでいきます。シミュレーションは、緊張する本番を乗り切るための準備運動です。

「ちょっと調子悪そう」って送ったことあります…

…それだと、何に気をつけるか分からないね

「発熱38度、2時間ごと検温を」なら動けますね…!

…そう。休憩中に同期と送り合う練習もいいよ
よくある失敗と対策|申し送りの落とし穴を避ける
申し送りでは、話しすぎ・聞き返しづらい雰囲気・記録との食い違いといった落とし穴に注意が必要です。これらは意識しないと気づきにくく、正確さを損なう原因になります。対策を知っておくことで、失敗を未然に防げます。
- 情報を盛り込みすぎて、本当に重要な点がぼやける
- 一方的に話し、受け手が質問しづらい雰囲気を作る
- 口頭と記録の内容が食い違い、情報が混乱する
情報を詰め込みすぎて要点がぼやける
「全部伝えなければ」という意識が強すぎると、かえって要点がぼやけます。情報量が多すぎると、受け手の記憶に残るのは一部だけになり、重要な点が埋もれるからです。網羅性と分かりやすさは、必ずしも両立しません。
対策は、「次の勤務帯で判断や対応が必要な情報」に絞ることです。それ以外はカルテに記載済みであることを前提に、口頭では要点だけを送ります。情報を絞る勇気が、正確に伝わる申し送りを作ります。
聞き返しづらい雰囲気が確認を妨げる
早口や一方的な話し方は、受け手が聞き返す機会を奪います。疑問があっても質問しづらい雰囲気だと、誤解が残ったまま勤務が始まり、インシデントにつながる恐れがあります。双方向の確認が、正確さの最後の砦です。
対策として、要点を伝えた後に「ここまでで質問はありますか」と一呼吸置きます。相手の目を見て、ゆっくり話すことも大切です。確認を歓迎する姿勢が、伝達ミスを防ぐ安全網になります。
口頭と記録の食い違いで情報が混乱する
口頭で伝えた内容と看護記録が食い違うと、どちらが正しいか分からず混乱します。記憶に頼って送ると、記録と微妙にずれることがあるためです。口頭と記録の一致が、情報の信頼性を支えます。
対策は、記録を見ながら申し送りをすることです。口頭で補足した内容も、必要に応じて記録に反映しておきます。記録と口頭をそろえることで、どの勤務者が見ても同じ情報にたどり着けます。

全部伝えなきゃって、つい詰め込んじゃいます…

…絞る勇気だよ。カルテに書いてある前提でいいね

早口で一方的になってるかもです…

…「質問はありますか」で一呼吸。それだけで違うよ
まとめ|申し送りスキルは看護師の基礎力|実践チェックリスト
申し送りの質を左右するのは、「正確さ」への意識です。情報を優先順位づけし、主観を数値や事実に置き換え、型と準備で緊張に備える。この積み重ねが、患者さんの安全と、チーム内の信頼関係を築いていきます。
申し送りは一度で完璧になるものではなく、継続的な学習で磨かれる基礎力です。失敗した日も振り返って次に活かせば、着実に上達していきます。焦らず、ひとつずつコツを身につけていきましょう。
| チェック項目 | 確認内容 | できている目安 |
|---|---|---|
| 優先順位づけ | 重要・緊急の情報を先頭に置けているか | 最初の一言で注意点を伝えられる |
| 数値化 | 主観を数値・事実に置き換えているか | 「元気そう」を使わず数値で表現 |
| 型の活用 | SBARなどの順で整理できているか | 状況→背景→評価→提案で話せる |
| 事前準備 | メモで要点を整理しているか | 勤務前に患者ごとの要点をメモ |
| 双方向の確認 | 質問を促す声がけをしているか | 「質問はありますか」を言える |
| 記録との一致 | 口頭と記録が食い違っていないか | 記録を見ながら申し送りできる |
申し送りの苦手意識は、職場の雰囲気や指導体制によっても変わります。もし今の環境で思うように成長できないと感じるなら、教育体制の整った職場を知ることも一つの選択肢です。
ろうどうぶつでは、看護師・保育士の働き方のリアルや、職場選びの視点を発信しています。今の職場で続けることも、新しい環境を探すことも、どちらも大切な選択です。
よくある質問(FAQ)
申し送りはどれくらいの時間で伝えるのが理想ですか?
患者さん1人あたりの目安は職場によって異なりますが、重要なのは時間よりも要点が伝わることです。優先順位づけと事前準備で、限られた時間でも必要な情報を漏れなく送れるようになります。情報を絞り、数値で明確に伝えることを意識しましょう。
緊張して頭が真っ白になってしまいます。どうすればいいですか?
SBARなどの型をメモにして手元に置くことをおすすめします。話す順序が決まっていれば、緊張していても型をたどるだけで送れます。事前に要点をメモしておけば、記憶に頼らずに済むため、落ち着いて伝えられるようになります。
先輩から「情報が整理できていない」と言われます。何から直せばいいですか?
まずは優先順位づけから始めるのがおすすめです。重要度・緊急度の高い情報を先頭に置くだけで、整理されている印象が大きく変わります。次に、あいまいな主観表現を数値や事実に置き換えると、さらに分かりやすくなります。
申し送りのスキルはどれくらいで上達しますか?
個人差はありますが、型を意識して繰り返すことで着実に上達します。毎回の申し送りを振り返り、改善点を次に活かす習慣が成長を早めます。失敗した日も学びの機会と捉えて、焦らず継続することが大切です。
口頭の申し送りと看護記録はどう使い分ければいいですか?
看護記録には網羅的に情報を残し、口頭では次の勤務帯で判断や対応が必要な要点を絞って伝えるのが基本です。口頭で補足した内容が記録と食い違わないよう、記録を見ながら申し送りをすると、情報の一貫性が保てます。

申し送りって、どれくらいで上達しますか…?

…個人差はあるね。型を意識して繰り返せば着実にだよ

失敗した日は落ち込んじゃいます…

…振り返れば学びになるよ。焦らなくていいね

